【はゆのトンデモ地球論】その31

にゃるさない はゆです♪



はゆのトンデモ地球論、第31回目です。
でも、読まれる前には注意があります。
はゆのトンでも地球論は第1回目から順番にお読みください(`・ω・´)

 →【はゆのトンデモ地球論】
















では、【はゆのトンデモ地球論】の第31回目に行きましょう♪
今回のテーマは「ルールとは? その8」です。

















さて、
特別天然記念物に指定されている動物が怪我などをしていて、
それを助けようとして触れること、または病院などに移動させること、
これは文化財保護法違反になるのか?

結論から言うと、ならない。
何故言い切れるのか?

理由は簡単だ。
文化庁に問い合わせた。
天然記念物の生物の部門の担当者が明言した。
前置きはいくつかあったが、要約すれば
善意で助けようとしたことが証明できるのであれば、罪に問われることは無い。
善意で助けようとした者を罪に問うこと自体があってはならない
」と言う回答であった。
(平成19年6月に問い合わせた。ここでは担当者の名前はあえて出さない)




実は文化庁に問い合わせるまもなく、
この事例が犯罪にならないことは初めから解っていた。

文化財保護法と言うものが日本には存在するのだが、
その第13章罰則に次のような一文がある。

 第196条
  史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保有に影響を及ぼす行為をして、
  これを滅失し、き損し、又は衰亡するに至らしめた者は、
  5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。

つまり、簡単に言えば、
特別天然記念物を勝手に持ち出したりして、その環境を変えたり、
殺してしまったりした者には罰則があります、と言う一文だ。
(史跡名勝天然記念物は生物以外の物も含まれるが、ここでは生物を当てはめている)

ここで明言されている行為は
例えば故意に持ち出す密猟であったり、過失に殺してしまう事故などである。
つまり、悪意があるもしくは悪意は無いが個人の不注意により起きる事例だ。

それも、この法律が出来た経緯を考えれば容易に想像が付くではないか。
特別天然記念物に認定されれば、その生き物の商品価値を高まる。
そうなると、その生き物が欲しいと思う悪意を持ったコレクターが現れる可能性がある。
むやみやたらに捕まえる事が出来なくなれば、
悪意を持ったコレクターなら大金を叩く事も考えられ、
それにより動く密猟者が出てくることも容易に考えられる。

だからこそ、上記のような罰則が生まれるのだ。
死滅している特別天然記念物を移動させると森林法違反になるのも、
悪意を持った骨をコレクションしているコレクターなどが、
特別天然記念物を殺してから持ち出すと言う事が出来ないようにするための
法であると容易に考えが結びつく。

こう言った法律が出来た経緯は、そこにある。
特別天然記念物を動かすことが対象なのではなく、
それを持って犯罪を行なう者を取り締まる為の法律なのだ。

それが証拠に、文化財保護法には次のように定めている

 第125条
  史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、
  又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、
  文化庁長官の許可を受けなければならない。
  ただし、現状変更については維持の措置又は非常災害のために
  必要な応急措置を執る場合、
  保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。

基本的には、文化庁長官の許可が必要であるが、
応急借置をとる場合はその限りではないと明言されている。





しかし、どうにも解釈を違える人が多いようなのだが、 
文化財保護法の第196条を
「善意で怪我をしている動物をその場から持ち出すことで違反になる」と
捉える者が多いように思える。
一体何故なのか。
私には不思議で仕方が無いのだ。

もちろん、文化財保護法の第196条だけを見れば、
「善意で怪我をしている動物をその場から持ち出すことで違反になる」と
捉える事も出来なくは無いのだが、
条文だけで捉えるなら、基本的なことを忘れてはいけない。
それは日本国憲法で国民が認められた自由である。



日本国憲法第3章、第13条及び第19条にに次のような一文がある。

 第13条
  すべて国民は、個人として尊重される。
  生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
  公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 第19条
  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第13条では人は個人として尊重されるべきであり、
道徳やマナー(公共の福祉)に反しない限り、その行動を認めるもの。
第19条では個人の考え方の自由を認め、
その良心に従って行動を起こすことの自由を認めるもの。


怪我をして弱っている動物が居て、
その動物を可哀想と思って助ける行為は
例えばその動物が人を襲うなどして危険である、などと言うことが無い限り、
通常は公共の福祉に反する行為では無く、
良心を持つことの自由は法で認められている。
それも日本国憲法において早い段階で明示されている。
国民の権利と義務で守られるべき行為であると言える。

つまり本来は
文化財保護法等を見るとき、
この日本国憲法を踏まえた上で見る必要があるのだ。

そして、日本国憲法を踏まえた上で見たとき、
善意を持って怪我をして弱っている特別天然記念物に指定された動物を
保護センタなどに運ぶ行為は文化財保護法から罰せられる対象では無いことがわかる。






小難しいことを抜きにして言えば、
道を歩いていたら、近くの家の中で人が倒れたとしよう。
その女性を助ける為にまったくの他人が隣の家に侵入したとき、
それを住居侵入罪とするか、しないか、と考えれば明白だ。

(もちろん、住居侵入罪を定める刑法には
 「正当な理由が無い場合」と前置きを設けているが、
 これは人対人から起こり得る問題を排除する為の一文である)





従って、ここで言う特別天然記念物に指定されている生き物が怪我などをしていて、
それを助けようとして触れること、または病院などに移動させることは
基本的に文化財保護法違反にはならないと言える。

しかし、それには絶対に証明しなければならない条件がある。
先に述べたように、天然記念物の動物の部門の担当者が
善意で助けようとしたことが証明できるのであれば、罪に問われることは無い。
善意で助けようとした者を罪に問うこと自体があってはならない
」と言う明言している。

善意で助けようとしたことが証明できなければならないのだ。
山の中の道で人が特別天然記念物に指定された動物を車の中に強引に入れていた。
これを「持ち出そうとしている」のか「助けようとしている」のか、証明できるだろうか?

そう、これが証明できなければ、いくら善意で行動していたとしても、
文化財保護法違反に問われる可能性も十分にある。
だから一昔前は「触れてはいけない」と言われたのだ。

だが、今はそれも簡単な事だろう。
山中であろうと、車で行動できる範囲は比較的携帯電話などが繋がる環境にあるし、
その近くの民家や通りかかった者に話をして証言してもらうことも出来る。
急を要する例外は無いとは言わないが余程の事がない限り、
通常は何らかの状態で然るべき場所に連絡することが出来る環境であろう。

となれば、怪我をした特別天然記念物に指定された動物を見つけたのなら、
然るべき場所に電話をしてどうすれば良いか判断を仰ぐことが一番良い。
善意としてそれを助けようとする事を証明することが出来ることに繋がり、
更に、その生き物の担当者であれば少なくとも
その生き物に対する最低限の知識を持ち合わせているだろうから、
下手に素人が触るよりも良い判断を出してくれることにも繋がる。
例えば一般的に特別天然記念物に指定される動物が怪我をしていた場合、
軽症の場合は治療せずにそのまま山に帰したり
現地で治療して、すぐに解放する場合も少なくない。
これは出来る限り野生の状態で保護活動を行なうと言う考え方に基づく。
人が出来る限り介入しない、または野生に戻しやすいようにする為だ。
そう言った判断も、やはり素人には難しいだろう。

ちなみにだが、然るべき場所と言うのは、守る個体によって変わる。
特別天然記念物に指定されている動物の場合、
それが生息している自治体に任せられていることが多い。
その為、特別天然記念物に指定されている動物ごとに連絡先が違うのである。
通常、それが生息している自治体の
教育文化課(もしくはそれに類する課)に連絡をすれば良い。

また、素人が天然記念物のデータを全て知っていると言う方は稀であろう。
その為、それが特別天然記念物に指定された動物なのか、
それとも指定されていない野生の動物なのかの識別が出来ない事も多いだろうが、
これが特別天然記念物なのか、野生の動物なのかでも同じ自治体で部署が変わる。

解らなければ、その動物が居た市の市役所に連絡すれば良いだろう。
そうすれば担当者に繋いでくれるはずだ。

















さて。

では、何故こう言った
特別天然記念物に指定されている生き物が怪我などをしていて、
それを助けようとして触れること、または病院などに移動させることは
基本的に文化財保護法違反になる、という間違った話が出てきたのか?





実はこの話は風刺話であると言える。
風刺漫画、風刺絵などという言葉は聞いたことがあるだろう。
標的となる相手の批判を遠まわしに指す、
または皮肉を含んだ冗談とする、そう言った意味を示す風刺である。

ここで言われているのは
特別天然記念物に指定されている動物を守るべき国(または地方公共団体)が
特別天然記念物に指定されている動物を守るための体制が
出来ていない事に対する風刺だ。

恐らく、国は国なりに専門家を雇い、
財源のある中で調査を行い、それを実行しているのだろうが、
それを「仕事」としている為に情熱が見えないのだ。

少なくとも、
特別天然記念物に指定されている動物を守りたいと願う一般市民に比べれば
その情熱は多くの意味で劣っていると私も思っている。

ならば、特別天然記念物に指定されている動物を守りたいと思う
一般市民に任せれば良いのだが、国側はそれらを良く思わない節がある。
細かいことはここでは書かないが、国側の主張する問題がいろいろあるようだ。
(特別天然記念物を純粋に守りたいと思う一般市民には理解できない内容もある)
その為、市民が行動を開始しようとすると、
国側がそれを抑制する働きを見せることも少なくないと言う。

そういった国側の行為から、このような話が生まれるのである。

特別天然記念物に指定されている動物を自分たちの手で守りたい。
これは国側を押しのけてと言う意味ではなく、
純粋に動物を守りたい気持ちであるのだが、
しかし、国側はそれを快く思わず、場合によっては反対する。

まさに、怪我をした特別天然記念物を助けようとすると、
法律違反になると言う図式が完成するのである。

















さて、少し話しを変えて。

国の天然記念物にセマルハコガメと言うカメが居る。
沖縄に居る陸生のカメなのだが、
ロードキルによる被害が非常に多いことでも知られる。

民家の近くにまで足を運ぶ事もしばしばで、
道路を横断中に車にひかれて死んでしまうのである。

そこで、石垣市教育委員会文化課では、道路でセマルハコガメを見かけたときは
道路から少し離れた場所へ移動させる事を呼びかけている。
これはセマルハコガメが道路を横断する事に対する危険性の応急措置とし、
国が保護のために天然記念物に触れることを容認しているとわかる。

普通に考えれば、これが妥当な決断であろう。
国の保護機関でロードキルの見回りをしようと思っても人件費が掛かりすぎる。
ならば、最も接点が近い住人に呼びかけることで、
そのコストも軽減でき、接点が近い分、より多くのセマルハコガメを守る事に繋がる。
守る事で住人の愛着が沸けば、車の運転などにも注意が行き、
更に過失の事故なども防ぐ事が出来る。
一石二鳥となるわけだ。

だからといって国民にそれを任せきりにしてもいけない。
セマルハコガメは比較的人里の近いところでの目撃も多く、固体も小さい。
そう言った面から密猟などのケースも多い。

国は密猟者などを監視しなければならない。
となると、必然的に善意の住人から情報を得る必用がある。
つまり、国側と住民の距離が近くなければ
固体を守る事なんて出来やしない事が解かるだろう?

このセマルハコガメのケースに置いては、
対象が小型で管理が容易であると言った事もあるのだろうが、
国と住人の協力で天然記念物を守ろうと言う行動に繋がる良い事例であると言える。

















特別天然記念物が怪我をしているのを見つけても触っちゃダメだ。
触ると法律違反として罰せられる。
なんて言葉で国を批判するよりも、
守りたい個体を守るために国と協力する方が
はるかに建設的ではないか? と思えて仕方ないのだ。





注)
 ここでは飽く迄、怪我をした特別天然記念物を保護する場合や、
 道路に死体が転がっていたら、その死体の所為で2次的な事故が起こり得る場合に
 それらに安全を優先する上で、それらに触れる、移動させると言う行為に対して、
 文化財保護法を違反する事にはならないと言う事を示しています。

 多くの動物の専門家が特別天然記念物に触れてはいけないと言うのも、
 元気な固体に触れることは宜しくないという意味合いであるので、
 例えば興味本位で特別天然記念物に触れることはあまり良い行動とは居えません。
by mikenekohanten | 2007-09-07 14:31 | 雑談